6月3日、岐阜県美術館にて、高橋源一郎講演会「芸術の未来」を開催しました。会場は満席となり、急きょ会場外にも特設中継コーナーが設けられ、両会場合わせて300人が軽妙洒脱な高橋さんの話に聞き入りました。
数々の文学賞の選考委員を務める高橋さんは、初めての美術展の審査の感想を交えながら、一次審査では最も興味を惹かれたという平野真美さんの作品をはじめ15の入選作品全てについて講評。
ラジオのパーソナリティとして鍛えられた話術で、ユーモアを交えながら現代社会を論じていきます。
「高橋源一郎賞」の〈THE MAUSOLEUM―大霊廟―〉の作者、安野太郎さんをステージにあげ、話を引き出していきました。
安野さんは、「僕、『ゾンビ音楽史』を書いているんです。僕が大賞の500万円をとったら、それでウランの先物取引をして大富豪になり、2020年の東京オリンピックの開会式でゾンビ音楽が使われて・・・」と荒唐無稽かつ批評性のある構想を話すと、会場からは笑いが起きていました。
「こういう講演会は、たいていは土日の2時から4時。競馬の結果が気になるんだよね。あっ、結果を教えないでね!」という高橋さんでした。帰りには、ミュージアムショップで、森貞人さんの「虫」のオブジェをおみやげに買っていかれました。選んだのは、作家らしく、“万年筆の擬態虫”。一見渋いようでいて、虫の目がきれいなピンクと水色のラインストーンなところに、高橋さんのお茶目心を感じました。
あっという間の2時間に、「独自の切り口での作品評論がおもしろい」「各展示の意図や解説が聞け、楽しかった。理解が深まった」「少し難しい印象の作品もありましたが、高橋先生の話を聴いてもう一度観てみたいと思いました」など、来場者は、講演会終了後、再度、展示室に向かっていました。
(M.T)