佐藤 雅晴 SATO Masaharu
HANDS(2017)
ぼくは、パソコンソフトのペンツールを用いて実写をトレースしたアニメーション作品に取り組んでいます。ぼくにとってトレースとは、対象を「自分の中に取り込む」行為です。それは自分の暮らす土地や目の前の光景への理解を深め、関係を結ぶ行為とも言えます。それらの作品は制作過程においてデジタル機器を活用していますが、実際には膨大な作画の枚数をこなすためには、自らの身体「手」をつかい生み出すことが必要不可欠です。
今回、《身体のゆくえ》というテーマから着想した「HANDS」では、猫をなでる手、ハンドルを操る手、入れ歯を洗う手、恋人にふれる手、ページをめくる手、おもちゃで遊ぶ子供の手、筆をはしらせる手、神に祈る手などなど、人々が世界と関係を結ぶために用いる様々な「手」の行為を撮影しトレースして、アーカイブされた「手」の映像作品をつくろうと考えています。
人が手を使って世界と関係を結ぶ実写と、手の部分だけをトレースしたアニメーションが混在する映像作品。作家にとってトレースとは、対象を「自分の中に取り込む行為」。膨大な枚数の作画は、デジタル機器を駆使する身体/手によって生み出されています。
《HANDS》
A video work mixing actual footage of people using their hands to make a connection with the world, and animation tracing the hands alone. For the artist, tracing is the act of taking the subject “inside oneself.” The vast number of pictures have been created by the artist using both digital devices and his own body through his hands.