谷本 真理 TANIMOTO Mari
この部屋とダンス
何か形を作ったり絵を描いたりすることは私の欲求の一つであるが、その行為や出来上がった物は自分の作為や意図の壁に囲まれているようで、もどかしく息苦しいことがある。ところがある時、ふと作りかけていた粘土の塊を床に投げつけてみた。自分がさっきまで作っていた形は一瞬でぐちゃっと潰れてしまったが、今までにない快感であった。それまでの自分を台無しにする行為と、それに伴う新鮮な感覚が私を息苦しい気持ちから解放させた。
投げる時、私の身体の動きに影響されて粘土は飛んで行き、壁や物に当たって潰れ、物が壊れたりする。粘土が潰れた感触や、粘土が当たったもの(壁や物など)に、まるで私が触れているような感覚がある。実際には私は触れたわけではないのに、粘土という重たくて可塑性のある素材が媒体となり、その瞬間がとてもリアルに伝わってくる。それは私が把握している範囲よりもずっと遠くへ飛び出していくような感覚である。私の振る舞いひとつひとつが軌跡となりがどんどん広がって空間が出来上がっていく、まるでダンスを踊っているような。
この行為は私にとって破壊ではなく、一度作った物や空間を変化させていく新たな造形方法のひとつなのである。
粘土で形を作り、柔らかいうちに壁や床に投げつける。心地よい身体感覚を探す振る舞いと作為を無にする行為とが作家自身の意図を崩し、空間を変化させます。空間内のすべてがまるでダンスの軌跡のような変化の予感に満ちるでしょう。
《Dance with this room》
The artist creates shapes out of clay, then throws them against the wall or floor while still soft. Working in search of a comfortable bodily sensation and acting so as to render another action meaningless both destroy the intentions of the artist herself and change the environment. The entire space becomes filled with the anticipation of change, as if it were the trajectory of a dance.
TANIMOTO Mari
Born in Hyogo Prefecture in 1986 / Based in Tokyo