三枝 愛 MIEDA Ai
庭のほつれ
2011年の東日本大震災以降、関東近郊の椎茸農家は深刻な原木不足に陥り、我が家でも手持ちの原木は3分の1にまで減少し、ビニールハウスはすかすかの状態が続いた。ほた木を支えてきた板は、ほた木の不在によって次々とたわみ、土に打ち付けた棒は根元から折れた。不要となった板はまとめて庭に放置されている。
2014年12月、私はその山の中からまだ形のあるものを拾い、蝋を塗り、ギャラリー内に展示した。
2015年6月、さらに長い2枚の板を大学へ運んだ。事故が起きたのは7月。保護するつもりで施した蝋の重みで、板はふたつに折れてしまった。折れずに残った片方の板には、何もすることが出来ないまま、卒業を迎えた。
2016年1月20日、わたしは庭へ、板を歩いて持ち帰った。ここから出るとき、帰ってきたとき、なにも状況は変わらなかった。でも考え続けなければいけない。なくした景色を本当の意味でなくすことのないように。今まで一度も見せてこなかった、このことの核となる存在、つまり椎茸の原木を、こんどは岐阜に持ち込んで眺めてみること。そこからもう一度はじめてみたい。
自身の生まれ育った環境とその変化を追うインスタレーションシリーズ。東日本大震災以降、激減し、椎茸農家や周辺環境の変化を引き起こしてきた原木を、箱の中(キューブ)に一時的にとどめ、展示空間の外側へと意識を開いてゆく場をつくります。
《I’m waiting for the time, when that field is opened again.》
This installation series explores the environment in which the artist grew up, and how it has changed. The artist has temporarily placed logs used to grow shiitake mushrooms, which have been in short supply since the Great East Japan Earthquake, in a box (the CUBE) to spread awareness outside the exhibition space of the changes faced by mushroom growers and their environment since the quake.
MIEDA Ai
Born in Saitama Prefecture in 1991 / Based in Saitama and Kyoto Prefectures