出展作家によるワークショップ第1回は、中村潤さんによる「裁縫鳥になろう!」。クモの糸などを使って葉っぱを縫い合わせる「裁縫鳥」という実在の鳥からイメージを広げ、居心地のいい自分だけの巣を縫おうというユニークな企画です。
5月7日、15組の親子が美術館庭園で“世界で一つだけの巣”づくりを楽しみました。縫い針(毛糸針)を“ブスッ”とさせるので、下が柔らかい地面が最適。屋内ではできないワークショップです。
中村さんは、実家の京町屋から持ってきた古時計を木の幹にかけたり、幟をつくったり、裁縫鳥の世界観を演出する会場づくりにも一工夫。
出展作品〈縫いの造形〉にちなみ、材料は、大きな紙・段ボール、紐、糸などです。用意された材料のなかには、中村さんが作品で使った毛糸や、美しい色のリボンもありました。
まず、大きな段ボールや和紙の上に寝転んだり間にはさまったりして、心地いい巣の状態を探します。案外、子どもたちは迷ったり悩んだりせず、巣のかたちを決めていきます。子どもは、「丸くなったら気持ちいい」「狭いところが落ち着く」など、好きな体勢の身体感覚が鋭敏です。
次に、紙を巣のかたちに切り取りとって、縫っていきます。曲がってもやぶれても大丈夫。縫い方に決まりはありません。巣の中に入って内側から縫ったり、段ボールの顔の部分に穴をあけたり、絵を描いたり発想が自由です!
巣が完成したら、木陰や岩の上など美術館の庭園の好きな場所へ。巣の中で、のんびりします。小高い地形の木陰には、自然に巣が集まっていました。こうやって、居心地のいい場所には自然に仲間が集まってくるのでしょう。
手づくりの巣があまりに心地よくてスヤスヤと眠ってしまう子や、「今度のキャンプに持っていこう!」という父子、「今晩これで寝る!」ときっぱり宣言する子に「寒いわよ」と困り顔のお母さんも…。
中村さんの出品作〈縫いの造形〉は、大きなキューブと、キューブと同じサイズの紙袋を縫い合わせるという作品です。ワークショップ「裁縫鳥になろう!」は、自分の身体がすっぽりと納まるような巣を造形し、その中に入るというもの。縫うことの身体性や既知の行為のサイズを変えるという点で出品作と繋がっています。子どもたちにとって、自分の感覚を信じ自由な発想でものを創りだす体験になったことでしょう。
参加者からは、「外の気持ちいい風の中で楽しいワークショップでした。鳥の気分を味わい、大人も子供楽しみました」「子どもたちの自由な発想に感動」「私が裁縫が好きなので、子どもたちに裁縫の楽しさが伝わればいいな」との声が届きました。
「秋には、拾ってきた葉っぱをくっつけて小さな巣をつくるワークショップができるかも」と、木々が茂る美術館の庭園で過ごし、ワークショップの新たなヒントを得た中村さんでした。
(Miyako.T)