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制作支援:作品素材の陶土を探して~谷本真理〈この部屋とダンス〉~

陶芸粘土を投げつけるなど身体の動作から創作する谷本真理さん。谷本さんから寄せられたのは、「美濃産の陶芸粘土を使ってワークショップをしたい」と「滞在制作をしたい」という二つの願いでした。

東濃地域(岐阜県南東部)は良質な陶土を擁し、全国でも有数の陶磁器産地です。また、多くの陶芸作家が拠点としています。

さっそく、伝統工芸から現代美術まで多くの陶芸作家が頼りにしている、かね利陶料(瑞浪市)に相談したところ、「作家さんに、実際に土を触ってもらった方が良いね。作家自身にとっても発見があると思いますよ」と、山から原土を採取し粘土製造する原料産地ならではのご提案を頂きました。

そして、11月末のある日、谷本さんが岐阜にやってきました。

木の破片が混じっている「木節」、濡れると粒子がカエルの目のように見える「蛙目」など、原土の違いを谷本さんは敏感に感じ取り、「ザラザラ!」「さっきのより粒が小さい」「こっちは粘りが強い」など、鋭敏な感覚を垣間見せました。

何千年の眠りからさめた土は、この後、粉砕や調合をされて、志野土(ざっくりとした灰色っぽい土)、もぐさ土(もこもこした軽い感じ)など、美濃の陶芸用粘土になっていきます。かね利陶料さんは、「原土を活かすのは作家。それを見たくて土屋をやっている。現代美術家が、土を面白いと思ってくれることから、平成の時代の焼きものが生まれる」と、谷本さんの制作を楽しみにしていらっしゃいました。

午後からは、陶磁器産業や作陶に関わる人材を輩出している岐阜県立多治見工業高等学校(多治見市)にお邪魔しました。多治見工業高校には専攻科があり、作家としても活躍する講師陣から、専門性の高い技術指導が受けられます。

広い校内と充実の設備に谷本さんもびっくり。作家を応援する意識の高い雰囲気に、谷本さんから笑顔もこぼれました。目が合うとあいさつをしてくれる在校生に、「高校生、かわいい!」と嬉しそうな谷本さん。2月から3月にかけて、滞在制作を行うことになりました。

 


原料を知り、土や陶芸と関わる人々と触れ合う中で、谷本さんの何が変化し、何が生まれるのでしょうか。

Art Award IN THE CUBE 2017では、入選作家に発表の機会を与えるだけではなく、清流の国ぎふにアートの「場」をつくり、文化に関わるさまざまな交流を生みだしていくことを目指し、作家を支援していきます。

(M.T)