6月19日(日)、岐阜県美術館にて、「会場見学・説明会 in 岐阜 アートの新たな源流を求めて」が開催されました。あいにくの雨模様にもかかわらず、約70名の方が参加されました。
今回のゲストは、作曲家の三輪眞弘さん(AAIC2017審査員)です。三輪さんは、岐阜県大垣市にある、情報科学芸術大学院大学〔IAMAS〕教授でもあり、コンピュータを用いたアルゴリズミック・コンポジション(決められた手順に基づいて作曲する方法のこと、自動作曲)と呼ばれる手法で数多くの作品を発表しています。
冒頭で、三輪さんは、「身体こそ“わたし”を証明する唯一のものではないか」「身体なき知性はありうるのか」と投げかけました。例えば、小説を書く(プログラムを搭載した)コンピューターと、人間の違いとは何でしょうか。
作品制作において、三輪さんは、「『こういう旋律によってこういう感情を呼び起こそう』とは一切考えない」とのこと。それは、身体性・人間性を排除しているようでいて、実は、“アルゴリズムによって生成されたもの(自動機械によって生じた音の集まり)への反応”が受け手の人間に委ねられているという点で、“身体のあるわたし”に焦点をあてているようにも思われました。
また、三輪さんは、人間の感情は、「案外、簡単な法則性によって喜怒哀楽が生まれているのではないか」とも述べられ、芸術と身体の関係について改めて考えさせられました。
最後に、進行役の衣笠文彦氏(AAIC2017企画委員)が「作品は三輪さんの身体の一部と捉えていいのか」と質問すると、難問…と苦笑しながらも、「アーティストは一種のメディア、巫女さんの役と考えている」と答えてくれました。
第2部では、美術館の野外展示場に移動し、フレームで示されたCUBEを見学。具体的な質問が次々と飛び出し、参加者たちは、CUBEの中央に立ってみたり写真を撮ったりしながら、作品企画のイメージを高めていました。
第3部は、美術館見学です。実際にCUBEが設置される予定の展示室を、正村美里副館長の案内で見学しました。また、所蔵品展示室では、ゴーギャンの自刷り版画など充実した近現代美術コレクションの解説がありました。
「1980年代に設立された地方の美術館のコレクションは近代が中心。その新たな見せ方、現代美術との関わり方は、多くの美術館のテーマとなっている。その点からも、Art Award IN THE CUBEに期待と関心を寄せています」との副館長のメッセージに、参加者は思いを新たにしていました。
(M.T)