アーティスト


縫いの造形
The shape of sewing
中村 潤 NAKAMURA Megu

縫いの造形

祖母が3年前に亡くなった。しかし祖母の残した衣類、祖母が編んだセーター、祖母の書いたメモ、住所録、それらを纏い、身につけるたびに、目にするたびに、私の皮膚や目を通した先に祖母がいる。私の身体の先にある記憶が祖母を感じさせる。

この作品はキューブの中に紙で箱を作る。糸で紙を縫い、箱になり、襞ができ、キューブの壁と縫い合わせる。眼前の紙に触れ、糸を見、縫い目をたどり、触れる。縫い目は「縫い目」そのものだけで存在しているわけではない。「縫い目」を目にした時、長い状態だった糸、進んだ針、縫い目が広がる紙、そこに当たる光、手触り、縫うという行為、その時間、など、このような事々が一緒になって、見る人の中に入ってくる。眼が慣れ、手で触れ、馴染むうちに、身体の知覚の少し先にある「記憶」や「経験」が顔を出す。個々の視覚、触覚の変化を通して、個々の身体に書き込まれた記憶を掘り起こす。

この作品は見えているものを通して、身体の少し先の見えないものを体験するのである。



中村 潤

1985年京都府生まれ。京都府拠点。
京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
2011/ゲンビどこでも企画公募2011展/ 谷尻誠賞/広島市現代美術館/広島
2012/バン・マリー(個展)/ギャラリーSUZUKI/京都
2014/Art Court Frontier 2014 #12/アートコートギャラリー/大阪
2014/AMI AMI ~トイレットペーパーを編む~(個展)/美濃和紙の里会館/岐阜
2015/アートの秘密基地展/浜田市世界こども美術館/島根
天井の無いキューブの中に、キューブと同じ大きさの底の空いた箱を作る。薄い紙の箱を、刺し子や刺繍の要領でキューブの壁と縫い合わす。内と外の縫い目や上部からさす光が、身体の記憶と繋がる。