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平野真美「ユニコーン公開メンテナンス」を“執刀”

5月3日、キューブ空間を集中治療室に見立て、架空の生物であるユニコーンを制作によって実在させ、肺と心臓に生命維持装置をつなぐ〈蘇生するユニコーン〉の公開手術(修復・メンテナンス)が行われ、約50人が、14時から17時に及ぶ作業を見学しました。

開腹しラテックス製の胃を全摘し、より柔らかく弾力がある、軟質樹脂製の胃に交換します。


2016年11月初め。骨格ができ関節が靭帯で繋がっています。肋骨の先には肋軟骨がありますが、骨格標本では溶けて針金で代用していることが多く、制作には考証を重ねました。同時に、血液循環をさせるポンプや血管の素材、口腔から気道を通って肺へ空気を送るエアーコンプレッサーのリサーチも進めていました。吸気のときは弁が開いて肺が膨張し、呼気のときは弁が閉まって肺が収縮する仕組みや構造をひとつひとつ作っていきました。

ユニコーンが完成したときには見えない機構ですが、外から見たときに胸部が上下しする、重要な内部構造です。難しい課題に、制作が遅れがちな時期でした。

3月18日。ユニコーンを運び込み、最後の植毛や縫合をして調整をしています。毎晩遅くまで黙々とユニコーンと向き合っていました。

3月20日。ユニコーンが生命維持装置へと繋がれようとしています。

実は、開幕2週間ほどたったころ、血液循環装置のチューブの劣化により“血液”がチューブ外に漏れ、血液の量が減って循環がうまくいこともありました。本当の生物のように、手間と世話をして延命をしています。

公開手術では、ユニコーンの腹部を開き、肋骨や内臓の状態を確認しました。

キューブ内には、この日に限り机を置き、制作中に撮影した写真や資料、制作の記録した映像を映すPCが置かれ、作業をしながら、来場者からの質問に答えていきました。

 

見学者からは、「怖かったけれど、ユニコーンの解剖はすごく興味深い」(各務原市,女性)「作り手による作品紹介やコメントがあったことでより作品について考えることができた」(埼玉県,女性)という声がありました。

また、学校団体鑑賞でユニコーンをみて興味が湧き、公開手術を見るために家族や兄弟と再来館した男の子は、終始興味深そうに見つめていました。が、怖くて恥ずかしくて、ユニコーンや平野さんの近くに寄れないのでした。


この公開制作は、外側に現れた「姿」に固定されがちな視点を、「内部」や「構造」へと移行させ、ある“存在”を成り立たせている本質・意識は何なのかと問いかけるものでした。