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松本和子「フレスコ画ワークショップ」を開催しました!

5月27,28日の二日間にわたって、漆喰を使って描く西洋の技法フレスコ画のワークショップを開催しました。ブオンフレスコ(湿式法)を体験する、とても貴重なワークショップです。

AAICでは、作家の教育能力開発と経済支援のため、入選作家とともにワークショップを企画しています。参加者にとっては、作家のアイデアを共有したり、珍しい技法を体験したり、新しい考え方に気づく機会となります。


  • 事前準備:前の夜から、消石灰に水を入れクリーム状にしておきました。

  • 漆喰づくり:砂を入れてよく練り、漆喰を作ります。ゴムベラ・ボウルを使って、真っ白なクリーム状のものを練るので、お菓子作りをしているように見えますが、腕が疲れるほどの力仕事。人の気配や記憶を描いた、どこか儚さを感じさせる松本さんの画風と裏腹に、身体性を伴う作業です。石灰が強いアルカリ性のため、肌荒れ予防でゴム手袋をしています。

  • 漆喰塗り:ウレタンフォームに、平らになるようコテで塗り付けます。凹凸があると、そこからひび割れてくるので、均一な厚みで薄すぎず厚すぎず、5ミリ程度に。参加者はみなさん、器用で上手! 丁寧に仕上げていきます。

  • ストラッポ技法のデモンストレーション(2日目):松本さんの作品を特徴づける、フレスコの彩色層のみを、膠の吸着力によって麻布等に貼り付け、引きはがすストラッポ技法。膠を湯煎で溶かし、寒冷紗を画面に置き、刷毛で膠を塗って貼り付け、乾燥させます。準備は時間がかかりますが、剥がすのは一瞬! その後、彩色層がついている寒冷紗を薄布で裏打ちします。ストラッポのデモンストレーションは公開され、一般入場者の方たちも興味深く見守っていました。

  • 下絵:漆喰の水気が飛ぶのを待つ間、下絵に目打ちで穴をあけていきます(スポロヴェロ)。漆喰パネルの上にそっと紙を置き、タンポで優しくたたくと、粒子の細かい顔料が、下に写ります。

  • 描画:漆喰が生乾きの間に顔料で描くのがポイント。描く部分だけを、その都度、左官していきます。顔料が染み込み、乾いて定着すると、強度が増し、フレスコ特有の透明感がでてきます。「水溶きした顔料が、漆喰に染み込む感覚を味わって」と松本さん。

軽やかで柔らかな幕、光や空気感が空間に広がる松本さんの作品の過程には、身体的な作業と、化学変化があったのです。参加者からは、「どんなことなのか全くわからずにやってみよう!の気持ちだけで参加しましたが、とても良い経験になりました」「初めての経験ができてすごく楽しかったです」「材料を練ったり土台から作っていく作業が、簡単ではないところが、逆に新鮮(フレスコだけに)でした」


「岐阜は、石灰の生産地なんです。金生山は有名です。AAICの後、岐阜のどこかの建物や公共空間に壁画を描いてみたい。日比野館長も30年程前に、岐阜の砂防ダムに絵をかき、それが薄れながらも今も残っていて、地元の人が大切にしてときどき手入れをしていると聞きました。ラスコーの壁画もフレスコ現象と言われています。長く残る壁画を岐阜で描いてみたいです」と松本さん。

自然素材を使って描き、時代を越えて残り続ける堅牢さと透明感を併せ持つフレスコ画は、美しい自然が残り、歴史性豊かな岐阜に共通するものがあるのかもしれません。ぜひ、また岐阜で制作・発表を!

(M.T)