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Art Award IN THE CUBE 2017開催記念トークin 京都を開催しました

審査員を招いて開かれる「開催記念トーク」。第3回は、美術家の中原浩大さん(AAIC2017審査員)を迎え、「マテリアル京都」にて開催されました。

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第1部は、無重力に近い環境で身体感覚が心理に及ぼす作用についての共同研究「AAS 宇宙への芸術的アプローチ」を軸に話が進められました。段ボールのなかに自分が入って圧迫される、ゴム風船を抱え込むなどの実験で、「心が安定する」状況を分析したところ、体を押し付けられたり抱え込めたりするものがある「ライナスの毛布」のような作用が示されました。

ライナスの毛布とは、あるものに身体が触れていたり、身体が一定の状態にあったりすることで「安心感」が得られる状態です。実証研究や理系のアプローチによって身体刺激から呼び起される原始的感覚に焦点をあてた作品制作は、会場に詰めかけたアート関係者に刺激を与えていました。

「身体のゆくえ」というテーマには、さまざまなアプローチや表現が考えられます。中原さんの作品が、領域を横断した思考のアウトプットであること、そして中原さんがふと「ぎりぎりのところに、絶対ある…」とおっしゃったことは、審査員としての度量の深さや信頼感を感じさせました。参加者たちは、「答えはなく、自分で考えるもの」というメッセージを受け取り、「身体のゆくえ」というテーマについてより深く考えるきっかけを得たのではないでしょうか。

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YouTube(第1部) 

 

続いて第2部は、展覧会施工技術者の佐野誠さんが加わってのトーク。

佐野さんが代表を務めるスーパーファクトリーは、展覧会に合わせて集結する技術者・制作者チームです。聞き手の安藤泰彦IAMAS教授(AAIC2017企画委員)が、「スーパーファクトリーの一員となるのに面接や試験はあるのか」と問いかけると、「面接試験はなし。一緒に仕事をしたスタッフが使えるか使えないかを判断する、あくまでスキルの問題」との答え。活動の根底には、作家の収入や技術経験値の向上というアーティストサポートへの想いがあるというコメントが印象的でした。この先の活動にヒントを見出した参加者もいらっしゃったのではないでしょうか。

「海外には展覧会施工技術者が多くいるし、大きな美術館には専門職がいる」とも言及され、日本の作家が作品制作・施工の技術上、頼れる相手がいることが現代美術の水準を上げていくことにもつながると思われました。

「毎日のように美術館から相談の電話がかかってくる」という佐野さん。世界的に活躍するアーティストや大規模な仕掛けの展示に関わっています。ブラジルを代表する現代美術家の一人で、伸縮性のある布を使った作品で知られるエルネスト・ネトの設営では、ネトの工房に縫製技術者がおり、佐野さんサイドは作品を天井から吊るす強度や施工などに関わったという役割分担、あいちトリエンナーレ2010で名古屋城にて公開された池田亮司の〈spectra [nagoya]〉では成層圏まで到達する巨大サーチライトの重さに苦労したなどのこぼれ話も。

第2部

YouTube(第2部)

第3部では、応募要項などの説明が行われました。

 会場にはアーティストや応募に興味を持つ方など約80名が詰めかけ、立ち見もでるほど。さまざまなチャンスの多い関西圏においても、岐阜で始まる新しいアートアウォードが注目されていることが実感されました。

応募期間中の最後のイベントとなる「会場見学・説明会」は、6月19日(日)、岐阜県美術館で開催されます。

(M.T)