記事


「O JUN・中原浩大×受賞者クロストーク」開催しました

開幕初日の4月15日、審査員のO JUNさん・中原浩大さんと、AAIC受賞者のクロストークを開催しました。

第1部|大賞を受賞した「ミルク倉庫+ココナッツ」の5名が登場!

Oさんは、睡眠実験を映像化した大賞作品について、「子どもが小さい頃、添寝をしながらお話を創って聞かせていたとき、つい寝入ってしまって、意味の通るような通らないようなことを言ってしまったことを思い出した。その感覚を視覚的に観る体験がおもしろい」とコメント。

中原さんは、「テーマ『身体のゆくえ』の“ゆくえ”の、可能性を感じられるところを評価した」と語りました。

「ミルク倉庫+ココナッツ」リーダーの宮崎さんは、「CUBEの内と外の条件を組み込むことを結構考えた」と作品プランを具体化していった際の意図を明かしました。

第2部|審査員賞受賞の7組が一挙に登壇!

三枝愛さん(OJUN賞)は、「プランでは、木を蝋でコーティングして館内で展示することにしていたが、木を削ってできたオガクズも置きたいと考ていく過程で、屋外展示へと変化しました」とプランの変化と、その過程で研ぎ澄まされた作品の核について語りました。

柴山豊尚さん(十一代大樋長左衛門賞)は、「岐阜に生まれ岐阜の自然に育てられた。その風景をキューブのなかに作ってみたかった」と話し、中原さんは、「作りたいという気持ちを隠していないのが良い」と応じました。

 

谷本真理さん(田中泯賞)は、Oさんの「CUBEの広さが足りないと感じたんじゃないかとか、いろんな思いを掻き立てる表現。外から見た時の景色がいい。精密画を見ているよう」という評に、「CUBEを搬入当日に“狭い”と感じ、格闘したあとです。前は、粘土を投げることがただ気持ちよかったが、今は、空間がどうやってできていくかに興味が移っている」と、AAICの制作期間を通して生じた自身の変化を話しました。AAICは、若手作家が、いろいろなことに挑戦し、変化をしていくきっかけにもなっていることがうかがえました。

耳のないマウス(三輪眞弘賞)の「床を這う人の速さがランダムになるようにプログラミングしている」という作品説明に、審査員二人は、「だからか…」と納得。異業種の4人のグループという特性について、「画家は独りで絵を描く。どんなふうに制作が進むのか」とOさんが尋ねると、作品原案構想を担当する松田さんが、「この形になるまで、何カ月もかけて話し合った。みんなの中間地点というのは、おもしろくないんじゃないかと思っている」と答えました。

 

水無瀬翔さん(鷲田清一賞)は、「CUBEをお店の形態にした作品です。WEBでも展開していて、CUBEの外にも作品世界が存在している」と、CUBEを越えて広がる作品構造を説明しました。

 

中原浩大賞の森貞人さんは、「好きで集めたガラクタが、“虫”になりたがった。最初は展示配置をきっちり考えていたが、展示しだすとどんどん変わっていった」と、制作中・設営中の感覚を語りました。中原さんは、「何度入ってもゾワゾワとしてしまって、個人賞を出しました」とご自身の身体の反応を不思議そうに語りました。

安野太郎さん(高橋源一郎賞)も、「不思議と、機械によって、自分の欲望がつくられている」と語りました。


AAICの感想を聞かれた受賞者は、「搬入期間が約2週間と長かったのがありがたかった」「スタッフがいてサポートを受けられるところが他のコンペと違う」「新作だったので、ファクトリーチームのアドバイスで助かった」などの作家を大切にする姿勢や育成力についての評価がありました。また、「一次審査の審査員のコメントを読んでいろいろ考えた」と、情報公開が作品を磨く一助となっていることが語られました。

今後について、大賞の「ミルク倉庫+ココナッツ」は、「僕たちも10年選手で若くして獲ったわけではない。そんなに浮かれているわけではなく、790点の中から選ばれたという責任を感じる。仕事を知ってもらえ、広い振り幅で仕事ができる大きなきっかけ。これから、活動の幅を広げ、AAICの結果をどう活かすかだと思う」と、冷静さを交え、今後の展望や意欲を語りました。

審査員の二人からは、「新しいアートシーンの象徴的な作品が選ばれている。ブレずに頑張ってほしい。みなさんの“ゆくえ”を楽しみにしています」とメッセージが送られました。

(Miyako TOBA)