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一次審査の経緯/審査実施報告

清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBEは、今日の息吹を感じることができるトリエンナーレを目指し、その第1歩として、地域・世代・ジャンルを広く開いて作品企画を公募しました。

受け止められ方が未知数の第1回でしたが、海外9ヵ国を含む各地から、想定を大きく上回る790件の応募をいただきました。たいへん多くの方にご応募いただき、誠にありがとうございました。全体の67%を20~30代が占め、平均年齢が36.4歳と新鋭作家の年代を中心としつつも、10代から70代まで幅広い年齢層からの応募がありました。対象が限定されたコンペや従来型公募展の枠組みから自由になったアウォードが歓迎されたことがうかがえます。

ご応募いただいた作品企画のアイデアは幅広く、ジャンルの壁を超えており、自身の表現をどのように提案するかが問われる審査となりました。キューブという空間での展示プランに苦心した多くの作品企画のなか、厳正な審査を経て、独自の感性でキューブを活かした15の作品企画が入選となりました。選ばれたそれぞれの作品企画は、ファクトリーチームのアドバイスなどのサポートを受けつつ、今秋から来春にかけて制作され、来年4月、岐阜県美術館で開催される「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2017」で発表されます。


一次審査の概要

8月初旬、岐阜県大垣市のソフトピアジャパンに、O JUN氏、十一代 大樋長左衛門(年雄)氏、高橋 源一郎氏、田中 泯氏、中原 浩大氏、三輪 眞弘氏、鷲田 清一氏の7名の審査員が集結しました。

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今回、予想の数倍もの応募があった旨を審査員にご相談したところ、多忙を極める方々にもかかわらず、「ぜひ全ての応募に目を通したい」とおっしゃられ、急きょ、事前に各審査員に全企画書を送付し、推薦する作品企画を一人50~80件程度を選定していただくことになりました。なお、1次審査を通し、応募者の名前・略歴等は伏せて実施しています。

当日、広い会場には790件全ての企画書が用意され、事前審査でピックアップされた作品企画には審査員ごとに色分けしたシールが貼られ、シール付きの企画書を中心に、全企画書を確認いただきました。なお、事前審査を反映したシールは、第1回投票の目安であり、事前審査による落選はありません。

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映像資料用の3台のパソコン、マケットなども用意され、改めて審査員が気になる作品の詳細を確認します。熱心な閲覧が1時間半程行われた後、名前入り付箋(一人15票)で第1回投票が行われました。ここで、790件から64件(平面9/立体25/メディア6/映像10/その他14)に絞られました。

30分強の意見交換を経て、第2回投票が行われました。今度は、一人5票です。この時点で、64件から23件に絞られました。3票入った作品企画が2件、2票が8件、1票が13件でした。3票及び2票の上位10件は入選確定となります。

当落線上で票が割れたのは、テーマへの迫り方、企画書の完成度、コンセプトの明確さ、キューブ空間ならではのプラン、表現したいことの切実さ…など、審査員それぞれで評価軸が異なっていることの表れであり、多彩な顔ぶれの審査員ならではの過程といえます。その評価軸のなかから絞ることはたいへん難しく、審査員の討議の結果、第2回投票で1票を獲得した13件から、残りの入選5件を選ぶことになりました。これまでの記名投票付箋は取り外され、一人3票の無記名付箋で投票が行われました。その結果、4票入った作品企画が1件、3票が1件、2票が3件、1票が8件となり、4票~2票を獲得した5件を入選としました。

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最後に15件の確認が行われ、入選が決定されました。第1回投票で1割弱に絞られた64件は、まさに僅差での分かれ目となり、どれが入選となってもおかしくない優れた作品企画でした。

多彩な顔ぶれの審査員を反映し、最終的には、一般的な現代美術コンペティションとはまた違ったバラエティに富むライナップとなりました。いずれの審査員も、新しい才能と出会う場として、Art Award IN THE CUBEが有効な場になる可能性があると感じられたようです。選ばれた15組が、これから7か月の準備と制作を経て、惜しくも落選となった作品企画を凌駕する優れた作品を完成させることができるのか?

芸術祭本番への期待が高まります。

(M.T)