記事


応募用紙アンケートコメントのご紹介

2016年4月から7月に募集した作品企画。応募用紙に付随するアンケートには、さまざまな思いや期待が書き込まれました。その一部をご紹介します。

審査員、賞金、キューブという空間への評価

このアウォードの特色を、直感的に本質的価値として受け止めているコメントが多く見られました。


【審査員】                              

「(現代的かつ現在的なコンセプトと、それを)判断するに十二分な審査員の方々が揃っている」「様々なジャンルのスペシャリストが審査員なのが魅力」「高校時代、鷲田清一さんの論文を読み、深く感銘をうけたから」「審査員に田中泯さんがいらっしゃり、今までの制作を新たなインスピレーションで再構築して空間を通じて表現することに挑戦したいと思った」

 

gathering_judges

【賞金】                              

「賞金から、“我々は本気である”という志を感じた」「費用の都合で諦めた作品をつくれるチャンスだと思った」「応募動機は入選者への制作資金(入賞賞金)の事前支給


【キューブ】                             

「キューブ型の展示空間を自由に扱えることに魅力を感じた」「インスタレーション形式の作品が応募できる公募が少ない中、貴重」「広がりすぎている(現代美術の)世界をキューブという限定的な場所で見せる試みはとてもおもしろい」「制約はスペースだけという展覧会は希有に等しいのではないでしょうか」


一方で、「身体のゆくえ」というテーマでありながら、女性の審査員が一人もいないことが残念というご指摘も複数ありました。また、「キューブの意味、テーマ設定、現代美術の状況把握等に何か無理を感じている」「キューブの規定(3面が壁面であること)がもう少し緩やかであれば」というご意見も。後者については、「質問に対し、“一次審査後の協議で話し合いましょう”という意向を込めて答えてくれているのはありがたい」という声をいただきました。

全体的には、作家主体であるところ、すなわち、一次審査が作品審査ではない点・制作費が先に支払われる点・制作期間が長い点・テクニカルアドバイザー(佐野誠氏)のアドバイスが受けられる点などが、高く評価されました。創り手である作家たちが、このアウォードの本質を最も鋭敏に受け取ったようです。

募集テーマとアウォードのコンセプトが応募を牽引

『身体のゆくえ』というテーマについて、「自身の制作と重なる」「見る者や創る者たちの知や哲学に踏み込んでいることを募集要項から全面に出している公募は少ない」「テーマに惹かれた」等、ご自身の作品とのシンクロや刺激を感じた方がとても多かったようです。

さらに、「見せ方を含めて作品の世界観を自分が思っている通りにできる公募は少ない」「ずっと頭の中にあったイメージをこのコンペなら実現できる」等、このアウォードの条件面が魅力とのコメントを多くいただきました。

また、岐阜での開催ということで、「応募要項の中で、“岐阜で生まれた小さな一滴”と記されたところが、岐阜出生の私自身のことのように感じました」「岐阜での大規模アートプロジェクトの計画に心躍りました」「岐阜のアートシーンがもっと活性化するといいなと思いました」等、県民からの声援・賛同も届いています。

museum

今後を見据えたご提言も。「この企画が継続され、同作家の作品展開が継続して展示される形式を検討いただきたい」「展示場所を美術館内に限定せず、街の至るところにキューブを設置するなど地域を巻き込んだ展開ができれば面白い」

一地方の美術展ではない、新しい価値観で現代を問うコンペになれば」と将来への期待を寄せて下さった方も複数いらっしゃいました。

入選者・応募者・鑑賞者にとって刺激的な場へ

現在、一次審査を通過した15人の作家がすでに制作中です。コメントを書いて下さった方の多くの方が、応募者の立場から鑑賞者の立場になられますが、「作家の脳内が、美術館のキューブ空間で繰り広げられると思うとワクワク」「多様化が目的でなく、人間の生の結晶としての作品ということに、芸術に対して真摯に考えておられることが良く解る。またそれをしっかりと受け止めて下さりそうな審査員の方々で、他の公募展からは感じ取れない可能性を感じました」等の深度ある捉え方をして下さっている方々です。この新しいアウォードが生み出す新感覚の展覧会を、きっと主体的に受け止めて下さることと思います。

主催者は、入選作家だけでなく、応募者にも、観る人にも、今までにない刺激的な場としていこうと、思いを新たにしました。

(M.T)