岐阜大学教育学部教授で画家の佐藤昌宏氏に、「AAIC2020」への想いを伺いました。
●新たな美意識を期待
AAICは、二つの点で斬新な展覧会です。一つは、公募により選出された作家に、技術的・経済的な支援をするというシステム。もう一つは、これまでの範疇を超える、キューブという立体的な展示空間があることです。
私はどんなタイプの作品でも、美を介在させて鑑賞するので、作家の美意識がどこに在るのかを探りながら作品に向かいます。それが全く新しいものであると感動します。それから、徹底的に、テーマの言葉にこだわったものがあってもいいし、言葉のもつ意味が、逆に突き崩されるようなものもいいですね。
前回、印象に残った平野真美さんの「蘇生するユニコーン」は、モノが存在することを通して、自分が生きていることを感じる作品。生命活動自体を、美として感じさせ、気づかせるというか、そして、これを美の概念に入れていいものかと、深く考えさせられました。
●美の介在と訴求
先日、AAIC2020で審査員をされる建築家・藤森照信氏の建築作品「ラ コリーナ近江八幡」を訪れました。草屋根の大きな平屋で、皮を剝いただけの歪みのある木を柱に用いており、アプローチの道も曲がりくねっています。言葉では語れない、我々の潜在意識をかきたてるような興奮を味わいました。
近くのアール・ブリュットの美術館「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」にも足を運びましたが、それが、藤森氏の建築美とも重なりました。こだわりの中で必死に描く作者の世界が、ストレートに迫ってきます。生の目で集中して見たものには力が宿り、普段気づかない記憶を呼び覚ましました。
日々発信される美術情報を通して、我々は美術を概念で見てしまう傾向があります。しかし、そこから外れた視点で、今を生きる人間の存在を問うことは重要です。美は劇薬みたいな要素もありますが、人間にとって、かけがえのないものだと感じています。
2018年12月18日 岐阜大学にて