AAIC2017の大賞受賞者「ミルク倉庫+ココナッツ」の創作拠点である東京都小平市のアトリエにて、AAICを振り返りながらグループでのアートワークについてお話を伺いました。
Q グループとしての活動のスタートは2015年ということですが・・・。
宮崎(ミルク倉庫)/そもそも「ミルク倉庫」とは、僕を含めた4人が借りた共同アトリエ(小平市)の名前で、それぞれが作品づくりを行なっていました。ただ、4人とも作品の傾向がギャラリーや美術館ベースで考えるようなものではなく、なかにはメンバーの手を借りる必要がある大きな作品があったので、便宜上「ミルク倉庫」と名乗り、グループ名にもなっていきました。その後、新たなメンバーが加わり、都心に近い八丁堀でアトリエを借り、ここで制作して八丁堀で個展やイベントを組むようになりました。
松本(ココナッツ)/その頃、八丁堀に僕がよくお邪魔していて、この活動自体がある種の運動としてとらえられるんじゃないかと考え、企画や運営を持ち掛けるようになって「ココナッツ」が誕生しました。
※現在、ミルク倉庫は4人・ココナッツは2人
Q ひとつの大きな運動体として表現行為を行なっていく場合、個々のストレスが蓄積していくこともあるのでは?
梶原/個人の活動はそれとして大切にしていますが、グループとしての活動は個々のアイデアや発想をグループで育てていくという面白さがありますね。
松本/お互いに刺激し合いながらやっています。会議はラインやスカイプでやることが多いのですが、「こういうアイデアがあるんだけどどう思う。」という発言をすると、「それこうじゃないか。」と一人が突っ込みを入れる。すると誰かがボケる。それを繰り返し行っています。
あるところでまとめに入ろうとすると、「それでいいのか。」と誰かが懐疑的な意見を言う。それを延々と行っているうちに、最終的に誰のアイデアかわからなくなる。その過程が非常に面白いと思っています。
宮崎/遠慮しないで言い合いますね。共通しているのはコンセプトかな。
松本/扱っている問題群は同じで、共有しています。
Q メンバーの皆さんの個々の活動も実にユニークですね。少し紹介してください。
篠崎/僕は、釘等を使わないで素材を積み上げ、バランスを取りながら立体を構築していくという彫刻作品を作っています。
坂川/美術を学んでるうちに電気に興味を持ち、電気工事士資格も取り、社会との接点を考えながら制作活動をしています。
宮崎/密閉されたタンクを重ねて水と空気を循環させるというものを作っています。特に構造物としての強度にこだわっています。
西浜/20世紀実験音楽とロックバンドをやっていますが、美術領域でいうと音楽を造形物にしています。例えば、一回演奏すると壊れるとか、見たときにどういう音が鳴るんだろうかということを「想像」させるようなものを作っています。
梶原/映像や写真による作品もありますが、今は、造園の仕事を始めて、植物を使った作品を作っています。
松本/僕は、例えば、ひっくり返した壺をひっくり返さずにひっくり返す方法とか、視力検査の時のCマークのランドルト環を使ったものとか、物が変化することに興味を持ち、創作活動を行っています。
Q これだけ活動領域の違う皆さんが、AAIC2017をどのように攻略したのでしょうか。
松本/「ミルク倉庫+ココナッツ」での本格的な作品づくりは初めてで、チャレンジでしたね。
宮崎/グループとして映像を使うのも初めてだったし、プランの段階では、うまくいくんだろうかと・・・怖さはありました。1次審査を通過した後、キューブの大きさを実際に見る機会をいただきましたが、外から見ると大きいと思ったのに、中に入ると意外と小さく感じましたね。
松本/要素をどこまで切り詰められるかが勝負じゃないかと思いました。それと、キューブ内の光度設計についても細かくやりました。キューブをうまく使おうと思ったら建築視点や工務店のような知識が必要かもしれません。特に、動くもの、映像系などは、展示期間が長いので耐えられるかどうかとか・・・。キューブが立つので、その料理の仕方が重要だと感じました。
宮崎/AAICは「美術展」ではなく「芸術祭(清流の国ぎふ芸術祭)」なので、美術に閉じこもるのではなく、他のジャンルの人から見ても鑑賞に耐えうるものを創りたいという意識がありました。
松本/それまでは、考え方がグループ展ベースだったのですが、AAICでは、みんながどのような役割で、一つのイメージを構築していくべきかを考える良い機会となりました。
宮崎/その結果、2つのグループから1つのグループになったという感じはします。
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本文中にはありませんが、2017の大賞作品について多くの質問をぶつけましたが、一つひとつ丁寧に答えていただき、作家側の多様な視点と思いを知ることができました。
「ミルク倉庫+ココナッツ」は、4/17(水)より京都大学総合博物館の春季企画展「タイムライン ―時間に触れるためのいくつかの方法―」に参加されるということで、我々も大変楽しみにしております。