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2019.06.04

【記事】AAIC2017入選作家(中村潤氏)インタビュー

糸や絡まる繊維、紙などを用いた作品を精力的に制作している中村潤さん。
2018年末より2019年1月中旬にかけて開催された、ギャラリー モーニング(京都市東区)でのグループ展「Favorite Art view」に続いて、1月19日から京都文化博物館(同中京区)で開催された「Kyoto Art for Tomorrow」にも参加。
入選から2年の歳月を経たAAICについて、振り返っていただきました。

Q AAIC2017の作品は、紙を縫うスタイルの作品でしたね。
私は縫うとか編むとかというルールの他に、紐状のものがピロっと出ているとか、毛玉やホコリなど、いつの間にかできた形などに、(なんだろうなあ、こうやってできているんだなあ)と気持ちが動きます。
付箋や紙などが自然と折れ曲がったり、折れたことで立ったりする形の変化も、作品にできないかなあと思いますね。

Q 素材の調達はどうされていますか?
素材は、余った刺繍糸やらセーターをほどいたもの、誰が買ったのかわからないけれど家にあったもの、人からいただいたり、たまたま目にして購入して保管しておいたものが多いです。
小学校の自由研究の工作をするため、プリンのカップやスプーンが何かに使えるのじゃないかと溜め込んだ状況が、今でも続いている感じですね(笑)。

Q AAICでは、ワークショップもされましたね。
木の葉や枝、植物の繊維などを用いて巣を作る鳥がいるのですが、美術館の園庭で、その鳥になってみようというワークショップでした。
展示作品で使用した紙や糸などを使って、自分のサイズに合った袋を創るという内容です。
それを木陰など好きな場所に置いて、中に入って、ぼーっとするまでがワークショップでした。袋にスッポリ入った人、頭だけ入れた人、窓を開けて外を見る人など、皆さんそれぞれのやりかたでぼーっとして、最後は静かに終わるというのがよかったです。
ひたすら集中するみなさんの様子を眺めるのも面白かったですね。

Q  画期的な試みでもあるAAICの制作支援は満足できるものでしたか?
素材のご提案など、制作段階から様々な支援があり、それらと私自身の考えで推し進めていく過程が面白かったです。
学芸員の方々が、作家の気持ちや根底にある基本的創意を形にする過程に寄り添い、長い時間を費やしていただいたことで、作品についてさらに考える機会となりました。
岐阜県の新たな展覧会として取り組まれ、たくさんの人の様々な思いで創られていく過程は新鮮で面白く感じました。

Q ボランティアさんにもご協力いただきました。
地元の京都から友人に来てもらった時もありましたが、こちらの制作ボランティアさんにもお願いしました。作品壁面の向こうとこちらで、糸のついた針のやりとりをしました。
会期中、作品の修繕のために美術館へ来た際には、ボランティアの方から伺った美味しいパン屋さんを訪ねたり、岐阜の街を散策したりしました。

Q AAIC終了後、何か変化はありましたか?
これがきっかけで「何かが大きく変わった」ということはありませんが、展覧会の会期が長いということもあり、制作上の小さな積み重ねによる気づきが多くありました。今の制作に繋がるような何かしらの影響があると思います。
サイズや素材のかかわり、手の思考、身体や物事の関係など思い巡らすことは継続しているような気がしています。

2019年1月15日 京都市立芸術大学 美術学部教室内にて
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中村 潤さんが、昨今、グループ展で発表した作品「糸糸の法則16」は、ペールカラーの刺繍糸を彩りよく絡め縫う作品で、手のひら大。
AAICでの大作制作から2年の歳月を経て、サイズこそ違えど、糸や絡み合う繊維や、繊維の集積でもある紙から生まれる創造は、日々進化し続けているようです。