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2022.02.18

AAIC2023オンライントーク(VOL.1/名古屋)を公開します

1月22日(土)に名古屋市で開催を予定していた「トークイベント・公募説明会」が新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となったことから、オンラインによるトークを行いましたので、その内容を公開します。

寺内曜子さん(AAIC2023審査員)、安野太郎さん(AAIC2017入選作家(高橋源一郎賞))による、応募者の皆さんへのメッセージ動画を公開します。

寺内曜子さん(2023審査員)による応募者へのメッセージ https://youtu.be/5ppJHQqT6N8

安野太郎さん(2017入選作家)による応募者へのメッセージ https://youtu.be/U7-YpDoM0BI

 

また、寺内さんと、安藤泰彦さん・河西栄二さん(AAIC企画委員)が対談を行い、AAICの特徴や今回の公募テーマなどについて、お話しいただきました。

■Art Award IN THE CUBE2023「CROSS TAIK」寺内審査員×企画委員

安藤委員:
AAICは、今回で3回目の開催となります。AAICの特徴の一つは「キューブ」を活用した作品づくりですが、寺内さんは、どのような印象をお持ちですか。

寺内審査員:
実は、私も過去に応募したいなと思っていました。(笑)


寺内曜子審査員

私は、「世界は本来一つで、分断や対立概念は人間が作っている」ということや、「私たちは世界の部分しか見ることができない」をコンセプトに、現場、現場の空間状況自体を作品に取り込みながら創作活動を行っています。そのためこのキューブという空間にはとても興味がありました。
ただ、私の空間に対する見方からすると、公募要項の「キューブを無限の小宇宙に見立て」というのはとても難しいと思います。キューブは「モノ」なんですね。岐阜県美術館の中にあって「外」も「内」も見える。あくまで展示室内の「入れ子」なんですよね。「モノ」としてのキューブという捉え方の中で、作品を考えていく必要があると思いました。
物理的には、デコボコのないまっさらな立方体空間が与えられるのはすごく珍しいです。大抵は、防火という点で天井は閉じちゃいけないというケースが多いです。過去の作品を拝見すると、キューブを意識して使っている人が思いの外少ないと思いました。つまり、せっかく、平らな天井や壁があって、しかも壁を切り取ることも可能なのに、それをただ「作品」をレイアウトする展示空間としか使っていないのもあり、もったいないなと。

安藤委員:
これまでにない視点ですね。

寺内審査員:
キューブというものにとらわれ過ぎても問題だけど、制限があるからこそ新たな発想が出てくることもよくあるので、様々なチャレンジを応募者にしていただけると面白い。


寺内審査員(下)、安藤泰彦(右上)・河西栄二(左上)企画委員

安藤委員:
今回の“「リアル」のゆくえ”というテーマについては。

寺内審査員:
私にとっては、今回のテーマ“「リアル」のゆくえ”が過去3回の中で一番、実感が持てます。

安藤委員:
確かに、寺内さんのコンセプトや発想は、今回のテーマである「リアル」とすごくシンクロしていると思います。

寺内審査員:
「リアル」というのは百人百様ですが、私が求めているのは、普遍的な「リアル」ではなくて、応募者個人の「リアル」ですね。誰か偉い人の言った「リアル」ではなくて・・・。コンセプトがどんなに自分勝手で幼くても、それを表現せざるを得ないという、「表現者としての動機の強さ」を見たいと思いますね。

個人的な話ですが、イギリスの美大で教えているとき、聾唖の学生が自分の舌の彫刻を制作しました。陶土で作った写実表現の実物大の舌が直立しているのですが、どう見ても手ごわい怪獣のように見えました。彼女は話そうとしても、自分の舌を思うように動かせないのでしょう。そういう彼女ならではの「リアル」な実感があって制作したのだと気付かされました。この作品は私の舌に対する意識を変えました。
それぞれの作家が、自分にとっての「リアル」はこれだという「こと」があって、それを表現した作品を通して観に来た人に伝わり、結果として観に来た人が、世界ってこういう面もあるということに気付き、そして世界の見方が変わることもある。
そのような意味での、いろいろな応募作品が集まることを期待しています。
私にとっての“「リアル」のゆくえ”というテーマの見方は、そうなるのではないかと思います。

安藤委員:
そういう、さまざまな「リアル」が現れる作品が集まってくると面白いですね。

寺内審査員:
観る人にとってもそうですよね。人によっては他人と比べ自分に自信のない人もいると思います。自分の思うことが世間の常識と違っていても良いのだと作品を観て感じ、自由を手にする、そういう方向に行けば良いですね。それが、我々表現活動をする者の一番の希望だと思います。
本来は一人ひとりが体や能力が違う中で世界と付き合わざるを得ない、その中で何が自分にとっての「現実」なのかというのは人それぞれで、人の数だけ何億通りもあると思います。様々な「リアル」が見えるというのは良いし、期待でもある。
また、創る本人にとっても自分と世界との繋がりをもう一度見直し、またそれをさらに発展させる良い機会じゃないかと思います。
逆に言うと、正しい「リアル」を求めないで欲しいですね。

河西委員:
AAICの審査方法ですが、入選作家を決定する一次審査は現物の作品ではなく企画書で審査しますが、どのような印象をお持ちですか。

寺内審査員:
この展覧会の面白い点は、いわゆる美術を超え音楽やダンス等表現媒体が広く、応募者も数人でプロジェクトに取り組むユニットだったり、作品も展示期間中に変化する物などがある等、受け入れ範囲の広さと思います。
物質として存在していない物を企画書で伝えることは難しいかもしれませんが、可能な限り、それらが具体的に伝わるような企画書であれば、審査をする側からすると、理解し易いと思います。
また、コンセプトは大切ですが、そのコンセプトと作品表現の因果関係などを、なるべく具体的に作品のイメージを審査員に伝えられる方法を考えてほしいですね。
私たちは、言葉で表現できないからこそ、言語を超えた、音や、踊り、美術という視覚的な表現を手段としているので、そのあたりを重要に考えて、私は審査したいと思います。

河西委員:
この展覧会は、入選作が決まってから制作を始める人も多いし、入選賞金も授与されることもあり、新しいことに挑戦できるチャンスもあると思いますが、どのような印象をお持ちですか。

 

寺内審査員:
制作時に技術的なサポートが入るという点は、この展覧会の一番素晴らしいことだと思います。自分一人では制作できないが、アシスタントや技術者の協力があれば、自分が頭に思い描いていたものが実現できるかもしれません。
他にもAAICには、年齢制限が無いところが良いですね。
若い頃はスポットライトを浴びるチャンスがなく、歳を経てからすごく良い作品を創っているという作家さんもたくさんいらっしゃいます。いまさら公募展は、と思っている方もいます。そういう方にとって、この年齢制限なしという要件は、とても良いことだと思います。

安藤委員:
最近は逆に、若い方が展示をすることができる場所や機会は多くなっているような気がします。そういった恵まれた環境の中で、作品が小さくなってしまわないで欲しいなとも思います。

寺内審査員:
若い方たちには、「現代アート」をつくるのを目的に作品を創らないで欲しい、ということも言いたいです。情報化社会の響影で、作品制作に必要な情報は外から多く得ることが可能だし、デジタル技術の進歩もあって、表面上は完成度が高くてきれいな作品を制作できる時代と思います。しかし、肝心な作品の中身に個性が見えない、そういう展示が多くなりました。
それよりかは、見た目は悪くとも、私のリアルを伝えるにはこの形にならざるを得ない、これ以外の媒体はありえない、という必然性が見える作品に出会いたいです。現代アートはやっぱりインスタレーションと決めつけるような作品は観たくないです。

安藤委員:
企画書から、「何故、この素材を選択したか」などが読み取れると良いということですね。

寺内審査員:
当然、審査員各自によって立ち位置は違いますが、私は、応募する人には「自分はこのことを表現せざるを得ない」という内的必然が動機であって欲しいと思います。外の価値基準に寄りかかるのではなく、「自分の内にある個人的世界観の結果として作品が生まれた」、そのような繋がりが見える作品に出会いたいと思います。

 

End