2022.03.10
AAIC企画委員会三輪眞弘委員のインタビュー
AAIC2023作品企画の募集に際し、三輪眞弘委員にお話を伺いました。
Q AAICには他の展覧会と違ういろいろな特徴がありますが、特にアピールしたいポイントをお聞かせください。
A 美術関係のコンペティションでは、完成した作品を評価してもらい、それを展示するという展覧会が多い中、AAICはプランを出して、選ばれたら50万円の制作補助があり、実際に展示する際には強力なサポートがあります。そういう意味で展覧会を作家と共に作り上げていくっていうところが一つの大きな特徴であり、一番の魅力だと思います。
それからもう一つ、キューブという空間の制限以外は何でもありという点です。キューブには様々な可能性があることを、参加していただく方に考えてもらいたいし、その空間をどのように作品化していくのかという視点も重要になると思います。
Q 2023の公募テーマ“「リアル」のゆくえ”についてお聞かせください。
A 「リアル」に似た言葉で、「アクチュアル」という言葉があります。「リアル」は、例えば、VRゴーグルを着けている人には、目の前に何かが見えていますが、それは実際には存在していない。その意味で「リアル」は主観的です。
一方、「アクチュアル」は本当に起きていること、個人の実感から離れた客観的なものです。例えば、従来のコンピュータをはるかに凌駕する量子コンピュータが実用化されつつありますが、これは我々の想像力を超えるところまでテクノロジーが進んでいるという現実なのです。私達はそれらとどう向き合っていくのかが問われています。
つまり、「リアル」と「アクチュアル」の狭間(はざま)で生きる人間ということが、今回のテーマの一番肝になるところなのかなと思います。
Q 主観と客観の狭間で、作家に浮き彫りにして欲しいこと何でしょうか。
A 今の時代は、人間が地球上に存在する機械システムみたいなものに組み込まれていく途上にあり、それを人によっては「ディストピア」と思う人もいるわけですが、その辺をどう考えるのかは作家によって違うのだろうなと思います。
だから「私にとっての」というのが、芸術表現においては最も基本にならなければいけない。ところが、現代に生きる「私」にとっての、「私」というもの自体が揺らいでいるっていうところに、この 「リアル」のゆくえというテーマの重要なポイントがあるかもしれないと思います。
Q 応募される方、また展覧会を鑑賞される皆様へのメッセージをお願いしま
す。
A この「リアル」のゆくえというテーマを決めるために、企画委員会でかなり時間をかけて議論しました。作品制作や鑑賞にあたっては、是非このテーマと作品との関係について考えてみてほしいと思います。審査員の先生方もまた、テーマとの繋がりにおいて応募された作品を評価してくださるはずです。
先ほど、応募作品には「キューブという空間の制限以外は何もない」と話しましたが、事実、このAAICには絵画や彫刻などはもちろん、音楽なども含め様々な芸術ジャンルの制限はありません。言い換えると、そのようなジャンルの歴史から一度自由になって、自分独自のジャンルを確立してくれたら、そんなに素晴らしいことはないと思っています。応募者には、そういう気概を持って挑戦して欲しいと思います。